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“世界のクロサワ”VS“若きカリスマ モリタ”
おすすめ度 ★★★★☆

 12月1日より、現在公開中の映画『椿三十郎』(監督:森田芳光、主演:織田裕二)のオフィシャルブックである。内容も椿三十郎役の織田裕二氏や井坂伊織役の松山ケンイチ氏のグラビアやインタビューを中心に監督・森田芳光氏や椿の好敵手である室戸半兵衛役の豊川悦司氏のインタビュー、若侍8人の座談会、椿らにより囚われの身となる“押し入れ侍”こと木村役の佐々木蔵之介氏のインタビューによる撮影秘話が満載である。

 以前、NHKで放映されていたドキュメンタリー『黒澤明に挑む、映画監督・森田芳光“椿三十郎”』(10/28)で森田芳光監督の黒澤映画や『椿三十郎』に対するこだわりや熱い思いが十分に伝わり、この映画をリメイクするならば森田氏を置いて他にいないと感じました。

 森田芳光&黒澤明といえば、1985年(昭和60年)、当時森田氏は国内外から賞賛され、その年の日本の映画賞を総ナメにした『家族ゲーム』(1983)の成功で一躍時代の寵児となり、再び主演の松田優作氏と組んだ作品が夏目漱石の古典的名作『それから』でした。一方、黒澤氏はカンヌ映画祭グランプリ作品『影武者』(1980)に続く、時代劇超大作『乱』で巨匠の風格を見せ、まさに“世界のクロサワ”VS“若きカリスマ モリタ”の対決となり、結果『乱』(キネマ旬報第二位)を押さえ、『それから』が1985年のベストワン(キネマ旬報第一位)に見事輝き、森田氏が“世界のクロサワ”を凌駕した(大金星)瞬間でした。それから二十二年後の現在、森田氏が再び“黒澤明”に挑むわけですから何か因縁めいたものを感じます。

 公開初日に私も見させて頂きましたが、“平成”の『椿三十郎』として大変面白く見応えがありました。主演の織田裕二氏も台本を初見して「これ、今書いたんですか?」と思わせるくらい45年前の脚本が現在でも通用する面白さを描く黒澤明氏はやはり偉大なる天才だと思います。


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